設計事務所の人材不足も深刻だ、そのせいで・・・
- アルノ
- 3月22日
- 読了時間: 4分
2025.03.22
建設業界の人材不足は一般的にも知られる有名な話しだ。
その為に、国土交通省や建設業界各社は、賃金上昇、休日の確保、女性の積極的登用、外国人労働者の導入等、様々な施策を打っている。
そして建物を作るにおいて最も川上となる、設計事務所の人材不足も年々深刻さを増している。
そしてその影響が現場にも影響しつつあるのだ。
設計事務所の人材不足が現場にどのように影響しているか、具体例を挙げてみよう。
根本的なスピード不足
設計事務所の大きな仕事は設計図を作成することだ。
そしてこの設計図を検査機関に確認申請書として提出し、確認済証という建物を建てる許可をとる。
その設計図を作成し、確認済証を取るまでのスピードが人材不足のために圧倒的に落ちている。
確認済証がないと着工できないのだが、事業全体の工期は決まっているため、それがあまりにも遅いと工事工程にも影響してくる。
そのしわ寄せはゼネコンにきてしまうわけだ。
設計図の不備
スピードが落ちていることに加え、とにかく確認済証をもらうために、内容を度外視して形式だけとなることすらある。
つまり設計図の内容が納まってなかったり、内容がスカスカだったりしてしまい、そのしわ寄せは工事をするゼネコンの手間となってふりそそぐ。
本来設計図に記載してあるべきものが記載してないと、工事計画をしながら検討協議をしなければならない。
それを行うのはゼネコンだからだ。
設計図の精度によってゼネコンの手間は大きく変わる。
「設計者の仕事は確認申請をもらうことで、そのほかの検討はゼネコンの仕事だ」と言っていたとんでもない設計者がいたが、はっきり言ってこんなプライドも実力もない人とは、仕事を一緒にしたくない。
事前協議をしない
設計図にあらわれないか箇所も影響がある。
確認申請書を提出するにあたって、インフラ関係は、各役所等と協議をしなくてはならない。
その内容を議事録としてまとめゼネコンに渡し、ゼネコンはその内容に基づいて各インフラの申請手続きと工事を行う。
したがって、設計図作成時に電気なら電力会社、電話ならNTT、水道なら水道局、ガスならガス会社やガス局、消防設備なら消防署と打ち合わせをして、その結果を設計図に反映させなければならない。
しかしこの事前協議を行わず描く場合があるのだ。
最近増えているのが、東京の設計事務所が地方物件を設計する時などにインフラ協議を行うには東京から、現場のある地域へ行って協議を行わなければならないという時だ。
事前協議を行わずに設計図を描くとどうなるか。
ゼネコンが協議を一から行うことになる。
その手間が増えるだけならまだいいが、設計図の方法だとダメだと断られたら大ごとだ。
その影響でシステムを変更したりすることになれば工事金額にも影響し、施主にも迷惑がかかる。
とんでもない話である。
質疑回答のスピード
工事内容を決定するにあたっては、設計者と施工者の質疑回答を中心に進められていく。
つまりゼネコンが質疑をし、設計者が回答をするという繰り返しの中で、具体的な工事内容が決まっていくわけだ。
しかし設計事務所が人材不足で設計者が複数現場を兼務していたりするとその回答が遅くなる。
多少遅れる程度ならいいが、それが深刻になると材料の発注や工期に影響することになる。
ゼネコンの残業が増えることにもなるので、あらゆるところに悪影響がある。
工事監理をしない
人材不足で工事の監理をほとんどしないことがある。
工事は工事監理者が要所ごとに確認をしながら行っていく。
その確認作業が工事監理であり、それは設計者や設計事務所の専門の監理者が行う。
法律上必要な最低限度は行うのだが、品質上問題にならない程度はすくなくともやってほしい。
そして工事監理を疎かにし、中間検査や、竣工検査などで指摘をするのだ。
指摘内容は普段から工事監理をしてくれていれば、起こらないものがほとんどだ。
それを是正するのはゼネコンだ。
設計者が人材不足だと、これだけゼネコンに影響がある。
建物を建てるだけでなくどんなことでも、川上で問題を解決しておけばその影響は少ない。
つまり設計段階でよく検討されていればお金も労力も少なくて済むのだ。
設計者の仕事は決して確認済証をもらうことではない。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。
Comments