2023.08.26
設計図には不備や不整合が多い。
最近は設計者のスキルが落ちてきたのか、意識が落ちてきたのか、不備があっても当然とすら思っている設計者がいる。
曰く「設計図は法的に成り立っていればいい。納まりを考えるのは施工者の仕事だ」だそうだ。
一方で施工者は「設計図で契約しているのだから、設計図通りにできず発生する追加工事はお金をもらわなければできない」と思っている。
どっちの言い分が、理に適っているかは皆さんの判断にお任せしよう。
今回は施工者が感じる「こんな設計図はうんざりだ」という設計内容をお伝えしよう。
難しい納まり箇所を描いてない
設計図の基本図ともいえる、平面図、立面図、断面図。
それぞれを簡単に表現するならば、平面図は上からみた図面、立面図は横からみた図面、そして断面図は建物を縦に輪切りにした図面と言えようか。
そしてそれだけで表現できない箇所を矩計(かなばかり)図や詳細図で表現する。
つまり矩計図と詳細図は、どのように納まっているかが分かりにくい箇所を描くことがその大きな目的ともいえるものだ。
しかし、その矩計や詳細図で納まりが難しい箇所を描かず、平面図や断面図で読み解けるような箇所ばかり描いて、肝心な施工者が知りたい箇所が描かれていない場合がある。
それはすなわち設計者もどのように納めていいか分からず、施工者に検討させようとしているのではないかとも受け取れてしまう。
そんな設計図は全体的にもいいものであろうはずかないのは予想がつくだろう。
整合性がとれていない
設計図には意匠図、構造図、電気図、設備図がある。
それらは密接に関連しあっている。
例えば、意匠図に記載の自動ドアは当然電気がなければ作動しない。
したがって、電気図面に自動ドアーへ電源を送るようになっていなければならない。
しかし、電気図面がそのようになっていない場合があるのだ。
このように整合性がとれていないことが多々ある。
ひどいときは意匠図に書かれている平面図と電気、設備に書かれている平面図の内容が扉の位置が違う、壁が増えている場合すらある。
これらで施工者が苦労するのは想像がつくだろう。
特記仕様書の内容が薄い
前述の意匠図、構造図、電気図、設備図の各設計図にはそれぞれの冒頭に共通のルールをまとめた特記仕様書がある。
例えば設備図面では、使用する標準仕様書の種類から工事区分、配管材料の種類、保温の仕様等さまざまなことが書かれている。
この特記仕様書の内容が薄いと、工事内容の不明な点が多くなり一つ一つ設計者に確認をせねばならない。
逆に、特記仕様書の内容が充実していると工事の計画が非常にしやすくなる。
最近の設計図は特記仕様書のページ数が少ない場合が多くなってきているのは困ったものだ。
ピットや配管、ダクトが納まっていない
設計図で納まっていないものの代表が、配管やダクトだ。
そしてそれらが納まっていない場所の代表といえば配管ピットやパイプシャフトだ。
逆にそれらに注意して設計図を作成するならば、より完成度の高い設計図となるといえる。
配管同士はもちろん、配管とダクト、配管とケーブルラック、配管ピットの地中梁貫通や電気室、パイプスペースを設備設計、電気設計と十分に打ち合わせを行えばできないことはない。
それが十分にできている設計図は施工図の作成時に余計な検討をせずにすむいい設計図である。
システムが成り立っていない
設備設計で一番困るのが、空調システムが成り立っていない場合だ。
空調の設計図には空調システム図や自動制御図で空調システムを表現しているが、そのシステム自体が成り立っていない場合がある。
大きく複雑な建物程、複雑なシステムになるのだがその場合、本当に成り立っているかの確認が必須だ。
成り立っていないまま施工してしまうと後から直すことなどほぼ不可能だからだ。
確認の結果、成り立っていない場合はシステム自体を再検討しなくてはならない。
システムの再検討はそのまま、配管やダクトの再検討も必要となり、その労力たるや膨大なものとなる。
そういうことがないよう、設計者は設計協力会社やメーカー任せにせず、綿密で正確な計画をしてほしい。
いかがであろうか。
これらは、決して設計者を侮辱しているわけではない。
設計者には耳が痛い話かもしれないが、逆にとらえれば、これらに気を付ければ素晴らしい設計図になるともいえる。
ぜひ上記の内容に注意して、施工者が感心するような設計図面を作成していただきたい。
大変だとは思うが、自分の実力が付くと思ってこれらを網羅した設計図づくりに挑戦してみてはどうだろうかと提案したい。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。
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