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執筆者の写真アルノ

設計者と施工者は永遠に分かり合えない?

2023.07.01

建築工事における設計者と施工者で立場が違うのは多くの人がご存じの通りだ。


設計者は建物を設計し、施工者は設計された建物を建てる。


更に、設計者(監理者)は施工者が設計通りに建物を建てているかをチェックする。


発注者からもそれぞれにお金が支払われるため、それぞれの立場は独立した立場となる。


このように明確な立場の違いがある。


しかし仕事をする上で両者はかなり接触があり、お互い綿密なコミュニケーションが必要となる。


そしてその過程で、立場の違い、考え方の違い、様々な齟齬が生まれる。


今回は、その齟齬からくる、両者の感覚の違い、そして昔と今とでのその感覚の変化を考察する。


前提として、あくまでも「多くの設計者、施工者」のことであり、全員がそうではないことは当然のことであるので注意願いたい。



今の施工者の感覚

今の施工者の感覚は、「設計図通りに作ればいい」というものだ。


こういう感覚の人はサブコンに多いのだが、ゼネコンにも少なからずいる。


たしかにその通りなのだが、設計図ははっきり言って不備だらけだ。


設計図通りに作ったら大変なことになる。


そうしてできあがった建物に不具合が多くはっせいする、ということは昨今ではめずらしいことではなくなってしまった。


ではどうすればいいのであろうか。


昔の施工者はその問題点を認識した上で、その解決のために努力をしていた。


それについては、後ほど詳しく述べよう。



今の設計者の感覚

今の設計者の感覚は「設計不備の解決は施工者の仕事」である。


更に極端な設計者は「設計図は確認申請を通すために法的に適合していればよい」とすら思っている。


つまり建物が納まっていなくても、それを解決するのは施工者の仕事と考えているというわけだ。


施工者に言わせれば納まっていない設計図を描く方が悪いと思うだろうが、設計者から言わせれば、それはあくまでも施工者側の勝手な意見となってしまう。


では、設計監理業務を依頼している発注者の立場から見たらどうだろうか。


発注者も設計者と同じく設計図は法に適合していれば納まっていなくてもよいと考えるだろうか。


決してそうは思わないだろう。


それは、つまり発注者の要求に応えていないということになるのだ。


たしかに限られた期間内に確認申請を通すのは大変なことである。


しかし、根本的にこのような考えをするようでは、設計者失格と言われても仕方ないと思われる。



昔の施工者の感覚

前述の今の施工者の感覚における問題点に対して、昔の施工者はその解決の為に次のような努力をしてきた。


いや、今の施工者でもこのように考えている人は少なからずおられるだろう。


それは、「設計図は正しいと思うな」さらには「設計図は間違っていると思え」という考え方だ。


施工者は、設計図を手に入れたら、徹底的に設計図の矛盾点、改善点を挙げ、その一つ一つの解決策を考え質疑に起こす、そのようにして納まる建物を完成させていくのだ。


本来、このような努力は設計時に設計者が行うべきものなのだが、施工者が行うことによりかろうじて、建物として成り立つ方法が保たれてきたとも言えよう。


今の施工者にこのような感覚の人が減ってきたのは憂慮すべきことだ。



昔の設計者の感覚

昔の設計者は前述の「設計図は正しいと思うな」という昔の施工者の感覚を失礼な話だと思っていた。


設計者自身も設計の不備を補うために、懸命に努力をしていた。


設計不備の質疑に対して是正方法を賢明に検討したり、是正に費用がかかったとしても、その費用を捻出するために、VE案を発注者に提案したりと、少なくとも納まっていない建物に対してそれは設計者の責任であるというプライドはあったように思える。


今の設計者にこのようなプライドが失われてしまったのは悲しいことだ。



設計者と施工者の意識乖離をなくすために

今の設計者、施工者がこのような感覚になってしまったことには原因がある。


それは建設業界自体の人数が減ったことによる技術力の低下および、マンパワー不足である。


昔がすべてよく、今はだめと一概には言えないが、本来あるべき感覚にするには業務効率化によるマンパワー補助と意識改革が必要だ。


そしてなにより設計者と施工者がお互いの仕事や役割を理解することができるよう、お互いの研修等において、教育することが大切であろう。


また、業界団体による情報共有や交流の場の設置も、設計者と施工者が理解を深めるためには有効な手段となるかもしれない。


このような両者の不断の努力なくして、本来あるべき感覚にはならないと考えている。



両者の意識乖離の改善策として教育による意識改善をと述べたが、それを行うためにはまず設計者と施工者自身の教える側の意識改革が必要だ。


それがなければ両者は教育の必要性すら感じないからだ。


今ある状況は良くないと考える人をより多くしていくことがまず求められるだろう。






 

この記事はこの人が書いています。


施工管理技士アルノ

1級建築施工管理技士

1級電気工事施工管理技士

1級管工事施工管理技士

1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。

現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、

2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。



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