設計図と設計図書の違いを分かっている現場監督は意外と少ない
- アルノ
- 2月15日
- 読了時間: 4分
2025.02.15
一般的に設計図といえば、建物を建てるための図面という認識があるだろう。
では、「設計図書」と言われるとどうだろうか。
「設計図」と何が違うのか分かりにくいが、それらは明確に異なる。
もしかしたら建設業界の人でも設計図書とは何かを正確に分からない人が多いかもしれない。
ネットなどを見てもそれらを混同している、もしくは不正確に情報を伝えているサイトが散見される。
しかし、その違いはとても重要なものだ。
これを機にぜひ、正確に理解してみてはいかがであろうか。
設計図とは
前述のように、いわゆる設計図は、建物を建てるための図面である。
主に意匠図、構造図、設備図、電気図に分類される。
しかしながら、建物は設計図だけでは情報が少ない為そのまま施工できず、設計図を基に、施工図や製作図を作成し、それに基づいて建てる。
つまり設計図は、建物を建てる基となる図面といえよう。
設計図書とは
では、本題である設計図書とはなんだろうか。
設計図書は、施主から元請に発注される契約の内容を表す資料だ。
そこには設計図も含まれるのだが、それだけではない。
設計図書を正確に言うと
・設計図
・仕様書
・現場説明書
・質問回答書
となる。
公共工事標準請負契約約款には次のようにある。
「発注者及び受注者は、契約約款に基づき、設計図書(仕様書、図面、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書)に従い、契約を履行しなければならない。」
では次に設計図書の内、設計図以外の「仕様書」「現場説明書」「質問回答書」とはどういったものであるかを確認しよう。
仕様書
仕様書には主に「標準仕様書」と「特記仕様書」がある。
標準仕様書で有名なものは国土交通省営繕部監修の「公共建築工事標準仕様書」だろう。
設計図には記載しきれない一般的な施工方法や納まり等に関する詳細の内容を記載している書籍だ。
大手ディベロッパーなどは自社で仕様書を作成している場合も多い。
現場ごとにどの標準仕様書を採用するかは、それぞれ定める。
それに対し特記仕様書は、その現場に限った独自の内容について書かれているものだ。
その現場に限った内容なので、標準仕様書と特記仕様書で異なる記載がある場合、特記仕様書の内容が優先される。
現場説明書
現場説明書は積算をする前に、どういう現場か、どういう条件や規制があるか、積算時の注意事項などについて説明した内容だ。
この設計図、仕様書、現場説明書の内容に基づいて積算をし、工事金額を算出することになる。
質問回答書
積算するにあたって、上記だけでは判断しかねる内容がある。
それらの質問書としてまとめて、元請から、施主に対して送付する。
施主はそれに対して回答書を元請に返信する。
不明確な内容については、そのように明確にした上で、積算すると言うわけだ。
設計図書の優先順位
設計図書それぞれにおいて、内容に矛盾が生じる合わない場合がある。
その場合のために、それらには優先順位が定められており、一般的にそれは次の通りである。
①質問回答書
②現場説明書
③設計図
④仕様書(④-1特記仕様書、④-2標準仕様書)
同時にこれら①~④が契約の内容ともなるので、現場を施工する場合、設計図だけでなく、①~④特に①質問回答書については良く把握しておく必要がある。
設計図と質問回答書で異なる場合、設計図だけ見ていると、質問回答書を優先する契約となっているはずが、契約とは異なる施工となってしまうのだ。
まれに設計図に質問回答書の内容を反映した契約図を作成し、それをもって契約する場合があるが、その場合は質問回答書の内容を気にしないでよいので明確だ。
契約内容や、工事内容がこれらの設計図書を基準に行うのは述べてきた通りだが、変更増減工事も設計図書が基準となるので、よく把握しておきたい。
まずは、設計図書とはなにかをしっかり理解することからはじめよう。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。
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