いい建物は適正価格と適正工期がないとできない
- アルノ
- 2月22日
- 読了時間: 4分
2025.02.22
公共工事でも民間工事でもその多くは競争入札によって施工会社が決まる。
当然そこには価格競争がうまれる。
また、工期についても一番短い工期を提示する施工会社が有利だ。
しかし、そこには大きな問題点が発生する。
その問題点は何か、言及していこう。
競争入札の罠
冒頭に述べたように入札工事の場合、例えば5社入札に参加したらその内1社くらいが会社の受注成績を鑑み赤字覚悟で請ける会社がいないとも限らない。
多くの物件でそのような状態になると、適正価格で請ける物件が少なくなるということになる。
その結果、赤字覚悟で受注した物件の安い落札価格が標準単価となり、ますます入札金額を下げざるを得ない状況が発生してしまう。
工期についてもそうだ。
短い工期を提示した方が、事業者としては早く新事業に着手することができる。
例えば、100部屋を有するホテルが1カ月早く竣工したとしよう。
ホテルの宿泊費を1万円とした場合、100部屋×1万円×30日=3000万円の売上増が見込めると言うことになる。
しかし工期が短くなると、その分突貫工事となり、品質も安全もコストも不利に働く。
工事には、適正金額、適正工期というものがあるのだ。
適正価格
しかし、事業者に適正価格というものがなかなか理解してもらえない。
高く発注しても、安く発注しても出来上がる建物は一緒で、元請けの利益が多いか、少ないかの違いと思われがちなのだ。
実際には工事金額が足りなければその分どこかに歪がくる
例えば、
・現場監督の人数が減りその分細かい所に管理が行き届かなくなる
・下請に発注する金額も減り、職人さんのモチベーションが低くなり品質に影響する
・熟練工に来てもらえなくなる
・仕上げ材が安っぽくなる
といった具合だ。
また、ただでさえ工事金額が高いと思われがちなことに加え、昨今の物価高騰の問題もある。
現実問題として物価は目に見えて高騰しているのだが、それを理由に工事金額を必要以上に多くしていると思われるのだ。
ますます適正価格での工事受注がむずかしくなってきている。
適正工期
また工期についても、工期が短かろうが長かろうができる建物は一緒でむしろ工期が短い方が経費がかからなくて安くなるとすら思われている。
実際には工期が短ければ価格と同じようにその分歪がでてくる。
・突貫工事となり工事金額が上がる
・職人が密集し、安全上の問題が発生しやすくなる
・最後まで職人が多く、仕上げ材に傷がつき、手直し工事が増える
・急いで仕上げなければならなくなり、いい仕事にならない
といった具合だ。
さらに働き方改革という問題がある。
現実問題はともかく4週8閉所を目指している現場が多くある。
しかし、それを実現するには事業者の理解を得て工期を延ばさねばならない。
仮に1年工期の現場だと、50週あると考えればおよそ1カ月半の工期延長をする必要があるのだ。
また、工期が延びればその分経費も掛かる。
働き方改革によって工期の問題に加え、工事金額にも影響があるのだ。
中国企業、韓国企業の中抜き
中国や韓国では、手抜き工事が問題になっている。
一括発注が何重にも行われその結果、実際に行う工事金額が極端に減ってしまうため、鉄筋を減らしたり、コンクリートの品質を落としたり、ずさんな安全管理になったりさまざまな方法でなりふり構わず工事金額を減らすそうだ。
手抜き工事が余りにもひどい為、「おから工事」などと言われている。
日本の場合、ここまで酷いことはないが、金額が安くなればいい仕事ができなくなるのは当然のことだ。
適正価格と適正工期がいかに大切か分かっていただけただろうか。
価格は高くても少なくてもいけないし、工期は長くても短くてもいけない。
いい建物を建てるには、適正価格と適正工期が必要だ。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。
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