2024.12.07
建設業界の多重下請け問題は、ニュースであがるほど世間からは問題視されている。
国土交通省も平成28年に「重層下請構造の改善に向けた取組について」というレポートを出しているほどだ。
実現しているかはともかく、鹿島建設は2021年に「2023年4月以降は、当社が施工する全ての建設工事において、例外措置を明確化した上で、『原則2次下請までに限定した施工体』制を実現すべく取り組んでいく」と発表していた。
それほど、問題になっているということだ。
多重下請けの何が問題なのか。
なぜ、そのようなことが起こるのか。
核心部分にふれていこう。
中国、韓国でみられる現象
多重下請けと言えば、日本より中国や韓国が大きな問題として話題になることが多い。
その問題点は「一括下請け」にある。
いわゆる丸投げだ。
元請けから一次請けに一括発注する。
一次請けから二次請けにまた一括発注する。
そのように何重にも一括発注され、その都度経費を抜かれるという「中抜き」が問題なのだ。
結果、適正な価格で工事を行えなくなり、手抜き工事が発生してしまう。
竹筋コンクリートやおから工事等の問題が発生するのは国民性と共に、そのようなシステムも原因となっているようだ。
日本の建設業における中抜き
日本においては基本的に一括下請けを法令で禁止している。
そのため、中韓のような現象は起こりにくい。
ではなぜそのようなことが取りざたされるのだろうか。
そもそもゼネコンが経費を必要以上に抜いて、下請けいじめをしている印象が強いようだ。
建設業界に携わっている職人さんでさえ、いやむしろ職人さんこそがそのように思っている人が多い。
それは職人さんが適正価格を支払われていないと感じており、その原因はゼネコンが中抜きしているからと思っているからであろう。
しかしよく考えてほしい。
基本的に工事の受注は民間工事であっても多くが競争入札である。
そのような中抜きをするとなれば、当然入札価格は高くなる。
中抜きを実現するには、入札に参加する全てのゼネコンが中抜き分も工事価格に上乗せしていることになる。
そのようなことができるのは談合した場合に限ると言えよう。
当然談合は違法である。
つまりそのようなことは起こりえないといえよう。
多重下請けの実態
しかしながら、多重下請けが発生しているのは事実である。
その形態が例えば
元請 ゼネコン建築一式工事
一次請 設備工事
二次請 空調設備工事
三次請 ダクト工事
四次請 ダクト屋職人さん
というようなものだと、現実として四次下請けとなる。
しかし、この場合の多重下請けを解消するには、どこを省けばよいというのだろうか。
極論すると二次請けを許さないならとサブコンが職人さんを社員にする必要がでてくるのだ。
大手サブコンでは、社員の電工や配管工はいる会社もあるが、それで請け負った全ての工事を行うことなど現状ではできないだろう。
ましてやゼネコンは基本的に施工能力がないのである。
実際に起こる中抜き現象
問題は、多重下請け自身ではなく、それに伴う代理店や、商社など、施工や計画、管理を行わない会社が下請けになった時である。
それがまさに中抜き業者となるのだ。
特殊な業種、工種などはそういう現象が起こりやすい。
メスを入れるべきはまず、そこからだろう。
多重下請けが改善されるにこしたことはない。
しかし、無理にそれを進めるべきではなく、多重下請によってどのような問題がおこるかを考え、その解決方法を模索するべきである。
言いかえると、多重下請けをなくすことによるデメリットがあると考えるならば、そのおこる問題を解決することを目的とするべきであろう。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。
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