2024.05.18
建設業界では、働き方改革、長時間労働是正が急務であり、その一環としてフロントローディングを進める流れがある。
それは、竣工間際に集中しがちな労務の山積みを極力前倒しにすることにより、平準化を図るというものだ。
しかしこのフロントローディングについて、私にはうまくいくとはとうてい思えない。
少なくとも今の時点でうまくいくような動きや雰囲気は起こっていない。
いったい何が問題なのか。
それについて述べていこう。
フロントローリングのポイント
フロントローディングにおける最大のポイントは、設計内容や仕様、施工時の納まり等を早い段階で決定し、あとは工事をやるだけという状態をつくるということだ。
それにより労力の平滑化や物価高騰への対策、納期対策等さまざまな点で現場の負担を軽減することができる。
しかしそれができない。
なぜか。
それは施主が決めごとを決めず、工事着手前なら変更ができると思っているからだ。
だから、たとえ決定事項でもその後に平気で変更されてしまう。
そして、そのことに対してそれではだめだ、変えていこうという意識改革の流れも皆無である。
このような状況下ではフロントローディングは絵にかいた餅と言わざるを得ない。
現場における変更要素
実際の新築工事はどのような時に変更が発生するのだろうか。
変更が発生する例を挙げると
・設計図に不備があった時
・役所の指導があった時
・定例会議で議論になった時
・設計に質疑をあげた時
・モックアップを作った時
・モデルルームを作った時
・施工図を作成した時
・納入仕様書を作成した時
挙句の果てには、出来上がったものに対して設計者がイメージと違うから変更なんてことにもなる。
これらを見れば分かるように変更の大きな要因は施主にあるとは言え、決してそれだけではないともいえる。
施主、設計事務所、施工者、役所、あらゆる状況下で変更の原因が潜んでいる。
これではフロントローディンをしようと思って一旦決定しても、結局そこから変更、変更となったら、返って必要となる労力は増えてしまう。
とは言えそれを打開するにはまずは、大きな要因である施主の意識改革が必要であろう。
施主の意識改革
私が発注者であった時に、実施設計図のタタキ台ができた時に徹底して図面のチェックを行った。
発注者としての立場でチェックすることはもちろん、施工者の目線でも、使用者の目線でも行った。
その分実施設計図は真っ赤になり設計者にとっては図面修正に手間がかかっただろう。
しかし結果、ゼネコンに積算を依頼し施工に至るまで、変更はほとんどなく竣工することが多くなった。
そして私は、その姿勢を社内に広めた。
つまり、あとで変更提案をするということは「私は設計図を良く見ていませんでした」ということと同義でありそれは恥ずかしいことだ、ましてや現場か進んでいけば、変更も無償でなくなる場合もでてくることを認識しなくてはならない、という風土を根づかせたのだ。
その会社は、そのような社風にすることができたが、残念ながらすべての事業者がそういうわけではない。
むしろ、ほとんどの事業者が旧態依然としたままであろう。
このままでは、フロントローディングなど夢のまた夢である。
私がフロントローディングがうまくいくと思えないのは、そのような理由によるものだ。
しかしBIMを進め、フロントローディングを進め、働き方改革を進めるには、このような課題に問題意識を持ち、業界全体で、場合によっては国が主導して進めなければならないだろう。
私と同じ問題意識を持つ人が建設業界に一人でも多く、持つことを切に願うばかりである。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。
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