2023.07.08
先日、自分が担当して建てた建物が解体された。
解体の原因は、コロナ禍による事業主の経営不振だ。
自分の担当物件が解体されたのは初めてだったので、何とも言えない感情がこみ上げてきた。
この感情を一体どう表現したらいいのだろう。
冷静に考え、整理してみると様々な感情が入り混じっていることに気づいた。
そこには、建てた時の様々な苦労、思いからくる複雑な感情があった。
そしてその感情の一つ一つは担当したときの苦労の結晶の断片であることが分かった。
苦労して建てたのもの解体による虚無感
まず一番大きな感情は苦労して建てたものがなくなったことによる残念な気持ちと、そこからくる虚無感だ。
建物を建てたという大きな達成感が一つ消えたことによる感情とも言えるだろうか。
施主と格闘しながら、一つの空調機、一つのコンセント、さまざまな納まりを検討、設置したその苦労は、なくなって改めて思い出させられた。
先日、解体され更地になった様子を敷地の外から眺めているとそんな気持ちがこみ上げてきた。
トラウマでしかない建物の安心感
一つ一つの建物はどれも大変な苦労の上に竣工している。
簡単にできた建物など一つもない。
その苦労は想像を絶し、できた後にその建物の近くを車で通ると吐き気を催すほどだ。
はっきりいってすべての建物がトラウマである。
私の場合、建物を建てるとそこに達成感とともにトラウマも同居するのである。
更に設備電気担当は、複数現場を兼務する関係上、建築担当に比べ多くの建物を担当する。
つまり、街にどんどんトラウマとなる場所が増えていくのだ。
今回、自分が担当した建物が解体され、その一つがなくなったことの安心感が若干あったことに気づいた。
納まりに自信がなかった箇所の不安感
担当物件にはさまざまな苦労があることは前述したが、その結果、一つの建物の中に、うまくいった納まり箇所と、そうでない納まり箇所がある。
その中でも、うまくいかなかった納まりはいつまでも覚えているものだ。
なぜなら、その箇所が不具合は起きていないか、不便に感じてないかという思いが心の片隅に残っているからだ。
それがなくなって不安感が解消したとは言わないが、それに近い安心感のような感情があるのかもしれない。
事業者の事業縮小に伴う複雑な思い
事業主の経営不振による事業大幅縮小に伴い建物が解体されたのだが、お付き合いがあった施主が事業縮小というのは複雑な思いだ。
やはり事業は施主、自社、協力会社が「三方良し」「共存共栄」であってこそ嬉しいものだ。
協力会社が倒産した話を聞くととても悲しい思いになるが、付き合いのあった会社が衰退していくことを良く思う人はいないだろう。
それが、たとえ建設中に格闘しながら、いがみ合いながら、悪口を言い合いながらだった相手であったとしてもだ。
建物の解体に伴いそのような思いが少なからずあったのは事実だ。
自分の担当物件が解体されたことにより、改めて担当した時のさまざまな苦労が思い起こされた。
何年たとうが、何十年たとうが、いつの時代も建物を建てるということが大変であることは変わりがないものだ。
そして、形あるものはなくなるとはいえ、担当物件が実際になくなるとは感慨深いものだ。
私の人生において解体される建物は今後、増えていくのだろうが、その都度一喜一憂しないような心づもりでいたいものだ。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。
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