2023.05.13
年度末になると、そこら中で道路工事を行っていて、忙しい時期なのに渋滞にはまってしまいイライラしがちだ。
誰もが一度は迷惑に感じたことがあるだろう。
一般的に、国や市町村が予算を使い切らないと次年度の予算を削られるから、このようなことがおこると思われているが、本当のところはどうなのだろうか。
上述の例からも分かるように、公共工事を中心に建設業界には繁忙期と閑散期がある。
なぜ、そのようなものがおこるのか。
それによりどのような弊害がはっせいするのか。
また、それに対し何か対策は考えているのかについて言及していく。
繁忙期と閑散期
建設業界では繁忙期と閑散期がある。
具体的には12月から3月が繁忙期、4月から6月が閑散期だ。
その理由は、公共工事の時期的な出来高の不均衡によるところが大きい。
これは、次のような国や市町村の予算執行の流れが関係している。
まず3月に次年度予算が確定し、4月から工事計画の設計・積算が始まり、発注・契約、工事着手、完工。
このような流れが単年度工事の一般的な流れになるため、全国の単年度計画の公共工事はこの流れのもと一斉に動くというわけだ。
当然、年度末は完工直前の時期であり工事が集中して繁忙期となり、設計・積算中の4月から6月は工事が行われなく閑散期となる。
工事集中による弊害
ではそのことにより、どのような弊害がおこるのだろうか。
冒頭の年度末に道路工事が増えるのも一般人が被る一つの弊害だが、他にも建設業界において繁忙期、閑散期のそれぞれで次のような弊害がおこる。
繁忙期には、職人さんや現場監督に長時間労働が発生し、さらには休暇を取得することが困難になる。
建設会社としても、工事を行うにも職人さんが集まらない、資機材が間に合わないといったことがある。
また閑散期には、職人さんは仕事が少ないために収入が減り、生活が不安定になる恐れがある。
建設会社としては、人材や資機材が過剰になるといったことが考えられる。
工事集中が改善されるとどうなるか
では工事集中が改善されると、どのようなメリットがあるだろうか。
当然、前述した弊害が改善されるというメリットがある。
具体的には、職人さんの収入や休日取得が安定化することによる処遇の改善が考えられ、建設会社も安定した工事の実施により、経営が安定する。
また、人材や資機材も実働日数の向上が見込まれ効率的に運用することができる。
更には発注者である国や市町村も、工期集中による入札不調などのリスクが低くなったり、公務員の事務作業の平準化も図れたりするだろう。
建設業界としても業界の人材不足に対する一つの取り組みとなるのではないだろうか。
こう考えると、何としても解決しなければならない問題である。
国土交通省の対策
では担当省庁である国土交通省は何か手を打っているのだろうか。
実は平成26年ころから工事の平準化に対する取り組みを開始している。
今、行われている取り組みは以下の内容で、通称「さしすせそ」と言われているようだ。
・(さ)債務負担行為の活用 複数年度にまたがる公共工事は次年度の予算の債務負担行為を行い、工事を計画する。
それを単年度工事でもできるようにし、予算の流れにとらわれなく、工事の計画をできるようにしようというものだ。
・(し)柔軟な工期の設定(余裕期間制度の活用) 受注者が余裕期間制度を活用することにより、着工時期をある程度、選択しやすくするというものだ。
これにより繁忙期、閑散期にとらわれることなく、受注者の都合で工期を決めることができる。
・(す)速やかな繰越手続
不足の事態等により工期延長をせざるを得なくなった場合に、年度末の予算決定を待つことなく、速やかに予算の繰り越し手続きをすることができる。
・(せ)積算の前倒し 発注前年度のうちに設計・積算まで完了させ、新年度に速やかに発注業務を行えるようにする。
・(そ)早期執行のための目標設定(執行率等の設定、発注見通しの公表)
年度末完工が集中しないように国や市町村が、上半期の契約率目標を設定するとともに、発注見通しを公表し、受注者が人材や資機材の計画をしやすくする。
以上のような取り組みを行っている。
その成果は少しずつ見え始めてきており、繁忙期は少しばらけ、閑散期にはだいぶ工事が行われるようになってきた。
以上、公共工事の繁忙期、閑散期の平準化について述べてきた。
平準化が進んだ方が利点が多いことは体感でも感じる。
今後ともさらにこの施策を進めてほしい。
今思えば前年度の年度末は、道路工事が少なかった気がするのは、気のせいではないだろう。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。
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