2022.09.17
工事現場は夏に暑く、冬は寒い。
冷暖房完備の建物内で仕事をしているサラリーマンからすると想像もできない暑さ寒さである。
どれくらい過酷かというと、夏に日向にある鉄筋を触るとヤケドし、熱中症は日常茶飯事すぎてニュースにならない。
冬は足先に感覚がなく、手先は思うように動かない。
常に凍傷と隣り合わせだ。
そんな過酷な工事現場を現場監督という立場から経験した面白事件からシャレにならない事件を5つご紹介する。
夏のガリガリ君、あずきバー事件
この現場の所長は、夏に熱中症対策と職人さんの激励の為に、常に職人さんが休憩する詰所の冷蔵庫(の冷凍室)にガリガリ君とあずきバーを完備する人だった。
現場監督、職人さんは休憩時間等にこれらのアイスを食べることを楽しみに夏の辛い作業を頑張っていた。
ある朝、現場に行く途中に所長より電話があり「昨日、たくさんあったアイスがなくなりそうだから買ってきてくれ」と言われコンビニを数件はしごして買っていったこともあった。
無事に夏を乗り切り、秋になると冷蔵庫にアイスは補充されなくなったが、私は毎日アイスを食べる習慣がやめられず、秋になっても冬になっても自分であずきバーを買って食べ続けた結果、3kg太った。
所長にそのことを報告すると「オレも」と言っていた。
夏のカッパ事件
雨が多い日本海側の地域では雨が降っても豪雨でない限り、現場監督や職人さんはカッパを着て仕事をする。
それは夏も同じなのだが、カッパを着なければ当然、雨に濡れて全身びしょびしょになる。
しかしカッパを着てもカッパは通気性が悪く汗がこもるので、結局汗で全身びしょびしょになる。
当時、新入社員だった私は必死で仕事していたのでそんなことは気にならず、それを見ていた上司が「お前は雨が降るとカッパを着ても着なくてもびしょびしょだな」と言われてはじめて気づいた。
夏の自動販売機殺人事件
夏の自動販売機は職人さんにとって死活問題だ。
自販機の飲み物が売り切れないよう、自販機屋さんに補充の依頼を連絡する係だった私は夏のある日、油断していて連絡せずブラックコーヒー以外がすべて売り切れになってしまった。
自販機屋さんに連絡したが、当然すぐ来るわけもなくしばらくそのままの状態で、次第に職人さんの怒りがピークに近づいてきた。
私は不意に「何とか自販機屋さんがくるまでブラックコーヒーで持ちこたえてくれ」と職人さんに言うと間髪いれず殺意が返ってきた。
どんなに暑くてもブラックコーヒーは売り切れないことを知った。
冬の仮設鉄骨屋屋根所長ブチ切れ事件
ここからは冬の工事現場の話。
1日に何メートル雪が積もることがある青森や北海道では冬の間は躯体工事ができないのだろうか。
雪かきをしようにもそれだけで1日が終わってしまうのだから。
答えは否。
東北より南の工事現場では想像できないと思うが、冬の間に工事を行う範囲に仮設の鉄骨を組み、屋根をかけ、シートで範囲を覆い、中をジェットバーナーで温めて作業をする。
コンクリート養生の為の温度管理もそれで行うのだから、品質管理の観点からも職人さんの出入りは厳重に管理されていて、また暖気が極力逃げないように素早く出入りしなくてはならない。
当然その場所以外は雪まみれで現場にくるだけでも大変だ。
その仮設の金額と豪雪の中での作業の大変さは現場の人にしか分からない。
ついに所長が私を捕まえて「支店の連中をこの大変さを見せに連れてこい!」と訳の分からない苦情を言ってきた。
寒さとストレスでどうにかなってしまったのだろうか。
冬の雪中行軍遭難事件
複数現場を兼務で担当している私は、ある遠方の豪雪地帯の現場に月2回、1泊2日で新幹線とレンタカーを乗り継いで通っていた。
途中、吹雪くと必ずホワイトアウトする道があり、冬にその道を車で通るときはハザードを焚きながら徐行運転で進む。
それも前の車のハザードを頼りについていくのだが、離れるとランプが見えなくなり、近づくと滑って止まれなくなるので絶妙の距離感とスピードで進まねばならない。
途中、脱輪して放置されている車を何台も見る。
つまり、毎回命がけで現場に向かい、そして帰るのだ。
命の危険を感じた私は、支店で「現場も安全も大切だが社員の交通安全も考慮してくれ」と安全部長と建築部長に直談判したが、見事にスルーされた。
普段は温厚な私だが、めずらしく殺意を抱いた。
以上、夏と冬の過酷な工事現場事件簿だ。
現場監督と職人さんが、これらの状況を歯を食いしばって乗り越え建物が建つ。
どうか、冷暖房完備のサラリーマンの皆様には、今いる建物もその苦労の末に建てられたことを知っていただきたい。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。
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