2024.04.06
新築工事において建物に電気を引き込む「受電」は一大イベントだ。
受電されると、いよいよ工程も最終段階にはいるという意識になる。
受電の時期がその後の竣工間際の一番忙しい工程にモロに影響するため、いかに早く行うかが大切になってくる。
この受電というイベントについて、そしてその影響について解説する。
受電とは
建物は電気がないとなにもできない。
照明がつかない、コンセントが使えないはもちろんのこと、エレベーターも動かなければ、自動ドアも開かない。
換気扇もつかえなければ、冷房暖房も使えない。
インターホンもならなければ、宅配ボックスも使えない。
火災報知器やセキュリティシステムも使用できない。
高層ビルにおいてはポンプが使えないので水すら使用できないのだ。
つまり人間の生活とは電気があってはじめて成立するというわけだ。
受電後の工程
受電後にはそれらの機器がしっかり動くか、またお互いの機器が正しく連動するかを一つ一つ確認する。
受電しないと機器の試運転調整ができないということになる。
試運転調整とはどのようなことをするかというと、例えば空調設備なら、空調機に電気を送った後に、
機器が運転するかの確認⇒
設計通りの温度と風量で風が吹き出すかの確認⇒
設計通りに部屋の温度が保てるかの確認⇒
故障した時に正しく警報が鳴るかの確認⇒
火災が発生した時に運転が停止するかの確認(必要な場合)
といった具合で確認事項も多数に渡り、それらはデータ測定して竣工書類で提出する。
そのような試運転調整をすべての機器において行うのだ。
考えただけで膨大な作業だ。
さらに、機器同士の連動がうまくいくかどうかを確認する。
簡単なものだと、煙感知器連動の防火扉が、感知器が発報したあとに自動で扉が閉じるか。
複雑なものでは、消火ポンプが稼働中に停電になった時、発電機が自動で運転して消火ポンプも引き続き運転するか、その後復電した後もポンプの運転に支障がないかなどだ。
受電日の電気屋さん
そのような工程が後で控えているため受電日当日の検査は失敗が許されない。
受電日当日には、電力会社の検査を受けるのだが、万が一この検査に不合格となり受電ができないとなると、再度日程調整して電力会社の検査を受けねばならない。
「不合格なら、次の日もう一度」というわけにはいかないのだ。
そのようなわけで、電気屋さんは受電日が近づくと、そわそわピリピリしてくる。
そして、無事受電すると安堵の顔を浮かべる。
しかし、電気屋さんが本当に忙しいのはここからだ。
前述のように多くの機器に電気をおくらなければならない。
送電するにも手順があり、簡単に送らなければならない。
数週間、場合によっては数カ月かけて順番に送電していくのだ。
今度は各機器に早く電気を送ってほしい人達がそわそわしだすことになる。
冬の電気室
比較的小規模の建物は電気を受けるキュービクルを屋外に設置することが多いが、大きな建物の場合はキュービクルを屋内電気室に設置することが多い。
そして建物が年度末竣工だと、冬の寒い時期に受電することが多い。
するとどういうことが起こるか。
防音の為に壁や天井一面に貼られているグラスウールは断熱の効果もある。
そしてキュービクル内にあるトランスという機器は発熱をする。
結果、電気室は温かくなり、電気屋さんが電気室に集まってくる。
細かい作業や、準備作業を電気室でやれるのは電気屋さんの特権と言えよう。
理不尽なゼネコン
受電が新築建物にとってどれほど重要か分かっていただけたであろうか。
しかし、その受電の大切さをゼネコン建築担当はあまり分かっていない。
躯体工事や仕上げ工事などの建築工事の工程は遅れ、それが原因で受電日が後ろ倒しになったにも関わらず、そんなことは棚に上げて、受電が終わるや否や、早くエレベーターに電源を送れだの、シャッターに電源を送れだの、挙句のはてに早く照明をつけろだの、電気屋さんでなくても「どの口がいう!」と言いたくなる。
さらに工程の遅れで一番困るのは、送電から引き渡しの期間が短くなることにより、試運転調整、データ集めが十分にできず引き渡すことになってしまう場合だ。
その場合、引き渡し後に不具合が発生し結局、施主に迷惑をかける。
ゼネコン建築担当はそんな事情はどこ吹く風で、不具合が発生すると「何やっているんだ!」と言ってくる。
思わず「お前が工程を遅らせたせいだ!」と頭をひっぱたきたくなる。
そんな理不尽と日々戦っているのも電気屋さんをはじめとするサブコンの方々なのだ。
今回は電気屋さんの一大イベント受電について述べてみた。
電気屋さんあっての建物であることを改めて実感し、ゼネコンは感謝したいものである。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。
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