2023.12.16
建物における更新工事において、大きな金額を占めるのが、空調機更新とキュービクル更新だ。
それらをいつ行うかによって、長期修繕計画が変わってくる。
空調工事は、機器の劣化とともにシステムの劣化も考慮しなければならないのに対し、キュービクルの更新は耐用年数の経過だけ気にすればいいので予算化はしやすい。
では一体築何年後に更新すればいいのだろうか。
条件ごとにそれぞれ考察してみる。
筐体の劣化
キュービクル更新にとって一番重要なのは筐体(箱体)の劣化状況だ。
筐体は屋内電気室に設置した場合と、屋外に設置した場合でその劣化は大きく異なる。
屋内電気室の場合、30年、40年経ってもほとんど劣化はないので安心である。
一方、屋外キュービクルの場合は25年が一つの目安となる。
10年をメドに表面の塗装にチョーキングが見られ、15年経つと小口が錆びて爆裂してくる。
20年経つと足元の錆と爆裂がひどくなり、25年たつとボロボロになる。
地域や気候、環境によってことなるが、平均的にこのような朽ち果て方をする。
塩害地域や鉄道沿線はさらに劣化が早くなり、上記のような朽ち果て方が10年程度前倒しになる。
特に鉄道沿線は線路からのもらい錆びがひどく、新築後5年経つと錆び始めるから注意が必要だ。
筐体の耐用年数を延ばす
屋外設置キュービクルの筐体の耐用年数を延ばす方法がある。
それは、細やかなメンテナンスだ。
電気主任技術者は筐体について、ボロボロになるまで気にしてくれず、定期点検で指摘しないので、それらメンテナンスは自主的に行う必要がある。
まずはチョーキングが見られる10年毎の全面塗装だ。
特にさびやすい小口周りはコマメなタッチアップ塗装をすると尚、良いだろう。
さらに、足元等が爆裂し始めたら、鉄板補強が必要となる。
これらを行えば、25年の耐用年数は40年前後に延ばすことができる。
各機器の耐用年数
次に各機器の耐用年数だ。
大きなところでは、トランス、VCBは30年、コンデンサ、リアクトルは20年、LBS、低圧ブレーカーも20年程度でそれぞれ更新の必要がある。
また、忘れてはいけないのが高圧ケーブルだ。
高圧ケーブルも少なくとも30年に1度は取り替えなければ、水トリー現象等による絶縁低下、最悪の場合短絡事故の恐れがある。
これらの年数は、長い間現場に携わっている人間の肌感覚であり、現実的な期間である。
メーカーや、主任技術者は安全側に推奨するので、上記より短い間隔で取り替えを推奨してくるだろう。
屋内電気室の修繕計画
最終的には、キュービクル全体を更新することになるのだが、屋内電気室設置のキュービクルの場合、全体の更新を60年目に設定するのがいいだろう。
その間の高圧機器は、耐用年数20年の機器は2回、30年の機器は1回取り替えるといいだろう。
筐体のメンテナンスは劣化状況をみて行えばよい。
屋外キュービクルの修繕計画
屋外キュービクルの全体更新は40年を推奨する。
その間の高圧機器は、1回ずつ行う計画をすればよい。
また40年筐体をもたせるには、前述したようなコマメなメンテナンスが必要である。
キュービクル更新工事
キュービクルは面数にもよるが全体更新すると数千万円単位となる。
また屋外キュービクルの場合、2面~3面の規模であれば、クレーンで吊り上げて入れ替える等、うまく計画すれば全停電の期間は1日で済むが、屋内電気室の場合は、キュービクルを撤去したうえで、新しいものを搬入しなければならず、綿密な搬出搬入計画が必要であり、場合によっては何日も全停電することになる。
そうなると、長期連休の工事になり、夜間の建物の警備をどのようにするかなど、さまざま計画しなければならないことがでてくる。
キュービクルは建物の重要設備であり、高額であることから取替計画には、綿密な計画が必要だ。
先日、12階建てで50年間1度もトランスを取り替えたことがないというビルをみたことがあるが、異音もしていて非常に危険な状態であった。
いつ停電してもおかしくない状況で建物を使い続けることはリスク管理として非常に問題がある。
計画的な長期修繕計画は企業、団体として必須事項である。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。
Comments