2024.02.03
「水斫り」という言葉をご存じだろうか。
「みずはつり」と読むのだが、現場監督はこの「斫り」という言葉に敏感だ。
「斫り」とはコンクリートを削る取る行為で、主にコンクリート打設後に不具合が発見された場合に行われる。
主な斫りの種類
コンクリートを斫る方法は主に以下の方法がある。
①ダイヤモンドコア
②ハンドブレーカー(コンプレッサー)
③ウォータージェット(水斫り)
①は円形の刃が回転しながらコンクリートに穴をあけていく方法。
その断面は非常にきれいだが強力すぎて、鉄筋もろとも削ってしまう。
鉄筋を切断することは躯体の強度に直結するので、決してあってはならない。
そのため、事前にX線撮影をし、鉄筋を避けて穴あけ位置を決定する必要がある。
②はコンプレッサーによる空気圧で、ノミのような鋭い鉄の棒を振動させて、コンクリートを砕く方法。
鉄筋を残してコンクリートだけ砕くことが可能だが、その振動により職人さんへの負担や騒音が激しく、周りのコンクリートや残した鉄筋にも少なからずダメージを与えてしまう。
③は文字通り、水圧によりコンクリートを削る方法。
水圧を調整することにより、周りのコンクリートや鉄筋にほとんどダメージを与えることなく除去することが可能であり、職人さんに対する振動の負担や騒音が抑えられるが、産業廃棄物としてコンクリートガラに加え排水は発生してしまう。
最近の斫り事情
上述のようにそれぞれ長所、短所があるが、以前はダイヤモンドコアやコンプレッサーによる斫りが主流だった。
しかし最近は水斫りが主流となっている。
その理由は、躯体へのダメージが少ない、振動騒音や埃が少ない、職人さんへの負担が少ない等を含めた品質が圧倒的に優れているからだ。
スリーブの入れ間違い
そもそも新築工事において、コンクリートを斫る行為はあってはならないことなのだが、どうしてもまれに発生してしまう。
なかでもよくあるのが、スリーブの入れ間違いだ。
これはさまざまな要因で起こってしまう。
例えば
・図面の見間違い
・スリーブセット時に墨がでていない
・補強筋の種類を間違える
・建築工事のスリーブの場合、職人さんが施工に慣れていない
等々だ。
これらは、起こりやすいので十分に気を付けるのだが、それでもまれに起こってしまうのだ。
水斫りの恐怖
その結果、水斫りを行うことになるのだが、水斫り工事の最大の欠点はその価格だ。
例えば、コンプレッサーによる斫りは1日あたり数万円だ。
単位は違うが、水斫りは1㎥あたり数百万円だ。
仮にサブコンがスリーブを入れ間違えると、ゼネコンから数百万円の請求がいくことになる。
ゼネコンにとってもそうだが、特にサブコンにとってスリーブの入れ間違いは恐怖でしかない。
スリーブを一つ入れ間違うだけで、数百万円が飛んでいくという恐怖が分かってもらえたであろうか。
多くの現場ではスリーブ設置工事は若い職人さんが行う。
しかしその重要性を良く理解している人は多くはない。
それを知っているのは失敗した経験を持つ人だけだ。
口ではそれを伝えるのだが、なかなか実感としてその重要性を伝えるのは難しいものだ。
ゼネコンでもサブコンでもスリーブ設置工事においてチェックシートを駆使するのは、そういう理由があるのだ。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。
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