2023.06.24
給料アップの必要性が社会的問題になっている中、建設業界においても職人さんの給料アップの必要性が問題になっている。
しかしながら職人さんの給料アップはそのまま建設費のアップとなり、事業者がなかなかそれを許さない。
例えば毎日平均50人の職人さんが稼働する現場の工期を約1年間の300日として2,000円給料をアップしたとすると、3,000万円の建設費アップとなるのだ。
これを企業側が負担に感じると事業計画自体が減少し、その結果職人さんの給料が減るという悪循環にもなりかねない。
この難しい問題に取り組むことが建設業界に求められている。
では実際に、どのような取り組みが行われているのだろうか。
公共工事の現状、民間工事の現状、打開策の3点に分けて述べていこう。
公共工事設計労務単価
国土交通省では随時「公共工事設計労務単価」というものを適宜見直し、改定している。
それは何かといえば、公共工事における建設労働者の賃金単価、いわゆる職人さんの労務費の基準となるものだ。
各ゼネコンは公共工事において、この単価を基準に積算をする。
この労務単価がいわゆる国が定める職人さんの労務費となり、逆に言えばこれ以上の価格でゼネコンが積算することはない。
それは、職種によってもこのなるし、社会情勢などによっても変化する。
しかし、その価格で全ての職人さんが給料をもらえるかといったらそうではない。
一年目の職人さんと何十年のベテランとでは、当然もらえる給料は違うし、会社毎の給与制度によっても当然ことなる。
それはさておき、職人さん全体の労務単価に直結するこの「公共工事設計労務単価」はとても大切な指標であることは間違いない。
民間工事の労務費と競争の原理
上述はあくまでも公共工事における話である。
民間工事においては労務単価においても当然競争の原理がはたらく。
もし民間工事においても公共工事のように労務単価の基準に沿った形にしたら、建設業界自体の事業数が減ってしまい、冒頭に述べたように結局職人さんの給料が減るということにもなりかねない。
資本主義社会においては、あくまでも競争原理は働くべきだ。
しかし今は、その競争原理が極端になり、企業利益や職人さんの労務費を圧迫するところまで来ている。
そこに来て長時間労働の規制などにより、土曜日を休所する現場も増えてきており、それもまた職人さんの給料の減少の原因にもなっている。
さまざまな要因があり、非常に難しい問題だがやはり、競争の原理はあくまでも適正の範囲内で働くべきである。
業務効率化
では、この厳しい時代に各専門工事会社はどのようにして生き残るべきであろうか。
ここでは「業務効率化」と「イノベーション」の2点について述べたい。
初めに「業務効率化」について、例えば同じ仕事量を、5人工で行う会社と10人工で行う会社とではゼネコンはどちらの専門工事会社と契約をするだろうか。
当然、前者である。
では、限られた人的資源のなかで、5人工で」行う会社になるためにはどうすればよいか。
それが「業務効率化」である。
業界は違うが、トヨタ自動車では工場において日々、作業員の動線の改善、道具の改善、作業手順の改善等、あらゆる改善項目を作業員自身からアイデアを出してもらい、その積み重ねによって業務効率を改善しているそうだ。
これが世界的に有名なトヨタの「カイゼン」である。
これは、一つの例だが今までやれてきたから大丈夫という考え方が会社にあるようなら、その会社が今後生き残れる可能性は低い。
経営者から、新入社員まで業務効率化の意識がある会社こそ生き残っていける。
そしてその小さな効率化の積み重ねが5人工で行える会社を生み出すのだ。
まずは自分から自部署からはじめてみるとよいだろう。
イノベーション
もう一つが「イノベーション」だ。
イノベーションの定義は、新しいアイデアや方法、製品、サービス、プロセス、技術などを創造することを指す。
もう少し砕けて言うと、業務効率化が業務の工夫であるのに対して、イノベーションは業務の抜本的な工夫と言えようか。
イノベーションで良く知られているのが、遠くは蒸気機関の開発、近くはスマートホンの開発だろう。
前者は今まで全て手作業で行われていたものを機械化することに成功した。
後者は、電話機能だけだった携帯電話にあらゆる機能を付加して、現代人にとってなくてはならないものとなった。
ここまで、大きな変化でないにしても、建設業界全体、いや自社の業務を大幅に変えるような変化をもたらすものを生み出すことを目指すべきだ。
これができた会社は生き残り、できない会社はじり貧となっていく。
今、変化のスピードが問われる時代に、変化できない会社が淘汰されるのは当然のことだろう。
業務効率化にしてもイノベーションにしても、それは業界、会社だけでなく個人の問題でもある。
自身の仕事を効率化し、イノベーションしてける個人、組織が給料問題を解決し、生き残っていけるのだ。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。
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