2022.10.08
労働基準法および、女性労働基準規則(以下、女性則)には、女性の就業制限業務というものが定められている。
つまり女性にはやってはいけない業務があるということだ。
ここでいう女性とは18歳以上の妊婦(妊娠中の女性)、産婦(産後1年を経過しない女性)を除く健常な女性のことだ。
就業に制限を設けている意図は女性を護るためのものなのだろうが、実際にその内容を見ると、昨今の男女平等社会においては、男性からみると男性を差別しているように見えるし、女性からみると男性はできる業務を女性はできないのはどうなのかと思われる内容とも取れる面がある。
今回はその内、工事現場で直面するであろう代表的な3つの例を挙げてみよう。
重量物を取り扱う業務
女性則第2条1には重量物を取り扱う業務に関する記載がある。
そこには30kg以上を断続的取り扱う業務及び、20kgを継続的作業に取り扱う業務とある。
つまり25kgのセメント袋を断続的に運んでもらうくらいならOK、12.5mmの石膏ボード14kgを1枚ずつ搬入してもらう分にはOKと考えるとイメージがしやすいだろうか。
しかしこの制限内容は、男性でこれくらいしか運べなかったら即、使えないやつ認定されてしまうレベルだ。
これは男女の身体のつくりからいうと仕方ない面もあるのかもしれないがその一方、ヒョロヒョロの男性とマッチョな女性をこの基準で定めるのはいかがなものかという考え方もある。
マッチョな女性からしたら、「これくらい全然、余裕で行けるのに法令上できないなんておかしい」という声が聞かれそうである。
坑内労働
労働基準法第64条の2には坑内労働における就業制限が定められている。
具体的には鉱山や、ずい道工事などにおける掘削、運搬業務等のようだ。
法令の文言としては、女性がこれらの業務に従事しなかったことを理由に解雇その他の不利益な取り扱いをしてはいけないということなので女性を護るためのものなのだろうが、掘削、運搬業務ということなので、重量物を取り扱う業務に繋がることが理由なのだろうか。
それにしてはこの法令には前述の30kg以上を断続的取り扱う業務及び、20kgを継続的作業に取り扱う業務というような重量の制限はないし、坑内労働自体に制限を設けているのは疑問が残る。
夫婦で現場作業をしている場合などに、今日は坑内作業だから旦那だけで奥さんは仕事ができません、というような状況もあるように思われる。
有害物が発散する業務
女性則第2条18には有害物が発散する業務の制限として次のような記載がある。
鉛、黄りん、塩素等の有害物、有害物のガス、上記または粉塵を発散する場所における業務。
女性はこれらの場所での業務を行ってはならないというものだ。
これらは母性保護という観点かららしい。
つまり妊娠、出産、授乳に際し、悪い影響のあるような環境での業務は避けるべきとの考えからのようだ。
その割には既に子供を産まない年齢に達していてもその扱いが変わらないのは疑問である。
また、そもそも男性だってそんなところで働きたくないという思う人もいるだろう。
男性が粗雑に扱われている感じもする。
以上が今回取り上げた3例だが、実は妊産婦についてはもっと多く、そして細かく就業制限が定められている。
妊産婦はともかく、健常な女性については今後、法律の上の制限のありかたについて本人の意思を尊重するなどの見直しがされてもいいのかもしれない。
女性でも男性より力がある人、子供を産む意志がない人など一括りに男性、女性という枠では区別できるわけではないのだから。
法令が定められた時と社会情勢も変わってきた以上、時代に応じて男性、女性、そして会社が納得して働ける法令整備をお願いしたいものである。
ぜひ、女性からの意見も聞きたいところだ。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。
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