2022.03.05
「人口構造にかかわる変化ほど明白なものはない。見誤りようがない。予測が容易である。」
経営学の巨人ピータードラッカーの言である。
就職氷河期という言葉をご存知の方は多いだろう。
バブルが崩壊した日本の1990年代から2000年代は「失われた20年」と呼ばれ、その間のおおよそ1995年から2005年まで期間の学生は就職が極めて困難であった。
そして、なにを隠そう私も就職氷河期世代である。
幸運にも私は何とか就職できたが、就職できなかったその世代の多くの人がニート化し、社会問題となっている。
それもそのはずである。その世代は団塊ジュニア世代にもかかる日本の人口分布上でも1、2を争う人口が多い世代なのだ。
その世代の多くが就職できずニートとなったのである。
日本社会にとって、どれだけ大きな経済的損失であることか。
当時、バブル崩壊の直撃を受けた建設業界、特にスーパーゼネコンを含めた大手ゼネコン各社は他の業界以上に新卒採用を抑えた。
そしてその歪みが今、真綿のようにジワジワと大手ゼネコン各社を追い込んでいく。
歪み現象とその影響
具体的にどのような歪みがでているのだろうか。
就職氷河期の人たちは今、40代の世代だ。
スーパーゼネコンに代表される大手ゼネコンから大手のサブコンにいたるまで、建設業界の大手と呼ばれる会社はことごとく、この世代の社員が極端に少ない。
企業にとって一番の稼ぎ頭となる働き盛り世代の社員がいないのだ。
その結果どうなるか。
会社の売上など生産性に大きな影響があることはもちろん、次世代を担う、技術の継承にも大きく影響している。
新入社員研修での人事担当の言葉
私が新入社員の時、研修で人事の担当者がしみじみいっていた。
「今は会社が厳しいから新卒者を多く採用できない。優秀な人が多いのに泣く泣く不採用にしなくてはならない」
バブル崩壊後の建設業界はどの会社も同じ状況だったのではないだろうか。
その時、生意気な新入社員の私は冷めた目で、企業の浮沈は人材によるのであれば、優秀な人材を獲得しやすい時だからこそ、たとえ経営は厳しくても数十年後のために採用を増やすべきだ、と思ったものだ。
今でもその考えは正しいとの自負がある。
経営者は常に目先のみにとらわれず、後の100年の大計を思索するべきである。
人材育成が急務
ではその歪みのあおりを受ける世代である今の30代の世代はどのようなことになるだろうか。
彼らが40代になった時に、上の世代は60代となって定年を迎える。
つまり40代で経験も実力も十分でないうちに部長などの責任職になると同時に、今まで会社を担ってきた人数的にも会社の中で大きな比重を占める60代がごそっといなくなる。
これが、企業にとってどれほど恐ろしい事であろうか。
その時に混乱が生まれない様、私は会社で30代の世代に事ある毎に、現状の世代の歪みを説明し、今の内に実力を付けなくてはならないという自覚を促しているが、当然それだけでは不十分である。
10年後に勝利するゼネコンとは
ここまで述べてきた事を鑑みると10年後、大手ゼネコンは岐路にたたされる。
歪みの影響を大きく受ける会社と今からその危機の対策をうっている会社とにおいてだ。
対策として、ある会社は歪みの世代を中途採用などで人材を確保するだろう。
またある会社は10年後を見通して今から少しずつ若い人材を登用して早期若返りを図るだろう。
今の30代に集中して人材育成を行う会社があるかもしれない。
それとは逆に、勝つことができない会社は、この歪みに気が付かない会社や、気づいても対策を講じない会社、そして対策を講じたが失敗してしまう会社だ。
もし、大手ゼネコンに勤めている方なら、自社の歪みに対する取り組みを確認してみてはいかがだろうか。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。
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