2021.08.14
建物を完成させて施主に引き渡すには様々な検査に合格せねばならない。
その為、工事工程には検査工程の期間を設けている。
小さな建物だと半月程度、大きな建物だと数カ月設定する場合もある。
それだけ検査は重要であり、様々な検査を合格したからこそ建物が当たり前のように電気や、水が使え、法律的にも問題なく使用できるのである。
ではいったいどのような検査があるのだろうか。
大きな検査をピックアップしてみてみよう。
諸官庁検査
諸官庁検査の大きなものには「消防検査」と「建築確認検査」があるのでそれらについては後述するが、そのほかにも各種インフラ関連の検査がある。
すなわち、「電気」「電話」「情報」「水道」「下水道」「ガス」等の検査だ。
検査は、電力会社、NTT、水道局、ガス局等が行う。
これらの検査に合格するとそれぞれの設備を建物内で使用できるようになり、そこから建物各所に電気や水、ガス等を送る作業が始まるという建物の検査のなかでも始めの方で受けることになる検査だ。
消防検査
消防検査は各種検査の中でも一大イベントだ。
検査の目的は建物が消防法に則って建てられているかの確認だが、消防に関する設備は様々ある。
大きく分けると「消火設備」「警報設備」「避難設備」の3種あり、それぞれ「消火設備」だとスプリンクラーや屋内消火栓、消火器等があり「警報設備」だと自動火災報知設備や漏電火災警報設備、非常放送設備等がある。
「避難設備」だと誘導灯や避難梯子等がある。
それらについて適切に設置されているかどうかの確認や、その他の消防法の内容に適合しているかどうかを消防署が1日から数日かけて確認をする。
建築確認検査
建築確認検査は主に消防検査の直後に行う検査で、市役所や確認検査機関によるものだ。
建物は建てる前に建築基準法に則って建設計画している事を示す「確認申請書」という書類を提出し、「確認済証」という許可が下りた上で着工するのだが、その確認申請書通りに建てているかを現場で検査するのが建築確認検査だ。
検査に合格すれば、消防検査を合格した事を確認した上で、建物の「検査済証」が発行される。
これにより、法的に建物が使用できるようになる。
サブコン自主検査
法的に建物が使用できるようになってもまだ検査は終わらない。
今度は施主に建物を引き渡すための検査関係がはじまる。
まずは、各協力会社による自主検査だ。
特に設備工事、電気工事の協力会社であるサブコンの自主検査は大々的に行い、会社の部長クラスがきて自社の工事の確認を行い、不具合箇所を指摘の上、是正する。
ゼネコン社内検査
協力会社の自主検査が終わると今度はゼネコンによる自主検査だ。
ゼネコンの自主検査は社内検査とも呼ばれ、主に、建築班と設備電気班かそれぞれ1日から数日をかけて検査を行い、その指摘内容を是正する。
設計監理者検査
ゼネコンの社内検査が終わると設計事務所による検査だ。
監理者による検査、設計者による検査があるが、それぞれ行う場合と合同で行う場合がある。
ゼネコンにとっては設計監理者検査がある意味緊張感がある。
まれに、とんでもない指摘をする場合があるのだ。
一般的に検査による指摘事項の是正に関する費用は、請負者つまりゼネコンや協力会社が負担する(設計図書にその旨を記載している事が多い)。
従って、とんでもなく費用が掛かる指摘をされてもゼネコンが負担して是正せねばならない。
この日ばかりは何事もなく過ぎ去る事を祈るのみである。
施主検査
設計監理者検査が終わるとようやく施主検査となる。
施主検査に至るまでにさんざん検査をしているので、大きな指摘はない場合が多い。
ただし、マンションなどのディベロッパーは細かい自社の仕様や検査ノウハウがあるので大量の指摘事項がある場合がある。
いずれにしても、いい施工をしていればおのずと検査の指摘が少なくなるのは自明の理である。
突貫工事にはならず、いい建物を建てて施主検査に臨みたいものだ。
竣工引き渡し
各種検査が終わり、全ての指摘事項を是正するとようやく建物を引き渡す事になる。
ただし、引き渡すまでに済ますことは検査だけでなく、各種書類や備品等が大量にあり、それらを引き渡し日までに準備せねばならない。
施主検査が終わってからも地獄の日々はもうしばらく続き、ようやく竣工引き渡しを迎える。
無事に竣工引き渡しが済むとようやくゼネコン社員は達成感に浸れる。
以上、今回は建物が完成してからどのような検査を受けて合格しなければならないかを述べてきたが、最終的に言いたいのは「建物は建てて終わりではない」という事だ。
これだけの労力をかけて、初めて建物は使用できるようになるのである。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。
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