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執筆者の写真アルノ

現場監督という弱者の実態

2023.02.25

工事現場で働いていると、現場監督は偉そうだという印象を受ける職人さんが多いのではないだろうか。


たしかにそういう現場監督はいるかもしれないが、偉そうにしていない普通の人も多くいる。


オラオラ系の独りよがり、自分勝手な現場監督はいざ知らず、良心的な現場監督は真摯に現場を納めようと、日々奮闘努力している。


そんな現場監督がどんな目に会うか。


あまりにも虐げられる弱者である現場監督の実態について語ろう。



構造的四面楚歌状態

現場監督は建物を完成させる為に、様々な立場の人と仕事をする。


そして、それらの立場の人と仕事をするとき、その多くは要望をするより、要望を受けることの方が圧倒的に多い。


つまり仕事を振られるという事だ。


では、どのような人からどのような扱いをされるのだろうか。


①施主

まずは、何といっても顧客である施主だ。


施主からは主に品質、工程、安全を追求される。


バブル崩壊後の2000年代、建設業界が大きく傾いた時、ゼネコンをやめた多くの技術者がディベロッパーなどの施主側の会社に転職した。


その結果、技術力を得た施主のゼネコンに対する品質追求はそれまでと比較にならないくらい厳しくなった。


さらに工程、安全は守って当然というのが施主の立場で、何かあるとこれ見よがしに追求される。


②会社

会社からは、品質、工程、安全に加え、コスト管理を要求される。


コストに関しては営利企業である以上、管理を要求されるのは仕方ないのだが、その追求がものすごい。


原価が悪化しようものなら、地獄の底に落とされる勢いだ。


味方のはずの会社から追求される事ほどつらいことはない。


③近隣

工事を行う上で、近隣との関係は最重要事項の一つだ。


近隣に迷惑をかけるようなことがあってはならない。


しかしながらその近隣からクレームや要望の無理難題を押し付けらえることがよくある。


関係を良好に保つために、常に気を使わなければならない。


④職人

職人さんからは日常的に支払い、段取り、罵倒という攻撃を受ける。


これが現場監督のメインの仕事ともいえるものだから仕方ないのだが、一度関係がこじれると毎日のように攻撃の対象にされてしまうので、お互い、気持ちよく仕事ができるように信頼関係を築かねばならない。


⑤上司、先輩

上司、先輩からは、①~④に不備があるとその改善対策を求められる。


すべてが順調に行っていれば特に問題ないのだが、膨大な仕事を抱える現場監督にとってそれらをすべて不備なくこなすのは至難の業だ。


たとえ一つのそれでも容赦なく追及される。


二つ三つ不備があった時の上司の顔など、想像するだけで身の毛がよだつ。



羅列してみたら四面楚歌どころか五面楚歌になってしまった。


一見、工事現場のヒエラルキーの頂点にいそうな現場監督が、いかに立場が弱い立場なのかが理解できたのではないだろうか。



各所からのパワハラ

上記では「追求」「押し付け」などと表現したが、平たく言うと、パワハラを受けるということだ。


程度の強弱はあるにしてもどれがいつパワハラになってもおかしくなく、もし複数個所からパワハラを受けるようなことになれば、会社をやめたくなったり、心を病んでしまったりするのは至極当然である。


見方によっては、パワハラを受けないために、一生懸命仕事をしていると言われても仕方のない状況だ。



心身共に疲弊

さまざまな立場の人の要望に応えるために、細心の注意、気遣い、準備、計画を行い、神経をすり減らす、それが現場監督の仕事だ。


さまざまな立場の人の要望を実行するために、多くの時間を費やし、身体に無理をする、それが現場監督の仕事だ。


心身ともに疲弊しないわけがない。


これを弱者と呼ばず、何と呼ぶのだろうか。


現場監督の仕事とはこういうものだ。



責任と報酬

そのような大きな責任がのしかかっても、それに対するそれなりの報酬があれば、がんばれる人も多いだろう。


実際にはどうだろうか。


全年代の現場監督の平均年収はわずか480万円との調査がある。


たしかに日本の平均年収450万円に比べたら多少おおいが、現場監督という職業のハードさ加減はあらゆる職業のなかでもトップクラスだろう。


そう考えると480万円はあまりにも低い。


責任対報酬という面ではとても十分とは言えないというのが私の見解だ。



よく現場監督は過酷だと言われるが、それは業務過多や長時間労働だけでなく、立場的にも過酷といえるだろう。


現場監督を志して入社した人がすぐ離職してしまうのも、こうした理由があるのかもしれない。


現場監督が報われる日は果たしてくるのだろうか。





 

この記事はこの人が書いています。


施工管理技士アルノ

1級建築施工管理技士

1級電気工事施工管理技士

1級管工事施工管理技士

1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。

現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、

2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。


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