アルノ

2023年12月23日5 分

火事の時の行動の基本は「知る」「消す」「逃げる」

2023.12.23

日本の住宅は木造建築がほとんどであるため、暖房に火を使い空気が乾燥する冬は火事の件数が多い。

統計を見ても、12月~3月までの4カ月で1年間火事の件数の約4割を占める。

建物を建てるにあたって、火事を消し、延焼を防ぐこと、つまり「消防」は最重要テーマの一つである。

現に、新築建物を使用する前に消防法に適合しているかどうか、消防署の検査に合格しなければその建物は使用することができない。

建物と消防設備は切っても切れない関係といってよい。

今回は消防の基本である建物における消防設備について述べていきたい。

消防用設備とは

一般的にいう消防設備は、消防法令上は消防用設備と呼び、「消防の用に供する設備」「消防用水」「消火活動上必要な施設」に区分され、「消防の用に供する設備」の中に「警報設備」「消火設備」「避難設備」がある。

ここでは「消防の用に供する設備」を省略して、また一般的になじみ深い「消防設備」と呼ぶことにする。

簡単にいうと消防設備は、「知る」「消す」「逃げる」に分けられる。

しかしながら、私は消防設備士のクセに、実際火事の現場に遭遇したら「知る」「逃げる」しかできないような気がする。

消防設備士とは

建物を建てるにあたって、消防設備を工事するには「消防設備士」の資格を持った人が行わなければならない。

消防設備士は、消防設備の種類により、細かくその役割が分かれている。

1類~7類及び特類である。

それぞれ以下の通りである。

1類 屋内消火栓設備・屋外消火栓設備・スプリンクラー設備等、水を扱う設備

2類 泡消火設備等、泡を扱う設備

3類 不活性ガス消火設備・粉末消火設備等、ガスや粉末を扱う設備

4類 自動火災報知設備・ガス漏れ火災警報設備等、の火災報知設備

5類 避難はしご・救助袋等、の避難器具

6類 消火器

7類 漏電火災警報器

特類 特殊消防用設備

さらに消防設備士の資格には、乙種(おつしゅ)と甲種(こうしゅ)の2種類があり、点検、整備が行える乙種と点検、整備に加えて工事が行える甲種がある。

つまり、工事を行うには甲種消防設備士を持った人のみとなる。

尚、6類、7類は乙種のみで甲種はなく、特類は甲種のみで乙種はない。

ちなみに私は、社命で甲種1類と甲種4類を取得したが、実際にその資格を使用したことはない。

資格を必要とする時は

では、甲種消防設備士はどのような時に必要となるのだろうか。

建物を新築する時には消防署にどのような消防設備を設置するかを打ち合わせの上、届け出る必要がある。

工事に着手する10日前までには消防設備士名義で「工事整備対象設備等着工届出書」いわゆる着工届を提出する。

その際、消防設備士の資格が必要となる。

また、工事完了日から4日以内に所有者(または管理者、占有者)名義で「消防用設備等(特殊消防用設備等)設置届出書」いわゆる設置届を提出する。

名義は消防設備士ではないが、設置届の中に、消防設備士名を記入する欄がある。

このような場合に甲種消防設備士の資格が必要となる。

尚、設置届については消防設備の種類によって、甲種消防設備士の代わりに乙種、消防設備士や電気工事士を記入する場合もある。

警報設備

消防設備の内、火事を「知る」ための「警報設備」は主に消防設備士4類で扱う設備だ。

まずは火事が起こったことを、迅速に知らせる必要がある。

火事を素早く知らせることができるかどうかは、人命に直結する。

火災報知器などはそういう意味で命を救うもっとも大切な設備といえるかもしれない。

消火設備

消防設備の内、火事を「消す」ための「消火設備」は主に消防設備士1類2類3類6類で扱う設備だ。

それを使っていったい誰が火を消すのだろうか。

それは消防隊員でも消防設備士でもなく、建物内にいる人だ。

消火設備はあくまでも火事が発生して間もない初期消火用であり消防隊員が行う本格的な消火活動用ではない。

スプリンクラー設備のように自動で消火活動をおこなうものもあるが、屋内消火栓設備などは、自分で火元までホースを延ばし、自分で消火活動を行うためのものである。

屋内消火栓を扱うのはハードルが高くても、せめて消火器くらいは扱えるようにしておきたいものだ。

避難設備

消防設備の内、「逃げる」ための「避難設備」は主に消防設備士5類で扱う設備だ。

初期消火に失敗したら、速やかに逃げなければならない。

マンションのバルコニーにある避難はしご等がそれにあたる。

バルコニーの戸境壁を破壊して避難はしごまで移動し、下階に降りるものだ。

他にもオリローなどで有名な垂直式や斜降式の救助袋があるが、実は、私は怖くて降りる自信がない。

消防設備士ではなく、電気の資格が必要な避難設備もある。

建物でよく見かけるピクトグラム、緑色の誘導灯だ。

誘導灯は工事をするには電気工事士等電気の資格が必要であり、点検については電気工事士等の電気資格に加え、消防設備士4類や7類の資格が必要となる。

以上、消防設備について説明してきたが、実は消防に関連する設備は、ガソリンや油等の危険物に関するものや、建物自体の構造や材質も密接に関係してくる。

消防用設備だけでは、不十分なのだ。

それらも当然、建物を使用する前に検査に合格する必要がある。

それだけ建物を建てるときには消防に関し、あらゆる面から検討されている。

初めていくビルに訪れた時やショッピングの時など、どのような消防用設備があるかをみると案外、面白いものだ。


この記事はこの人が書いています。

施工管理技士アルノ

1級建築施工管理技士

1級電気工事施工管理技士

1級管工事施工管理技士

1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。

現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、

2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。

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