アルノ

2023年2月18日4 分

建設業界の離職率は高くないでしょ

2023.02.18

建設業界の人手不足は以前から言われている。

さらに建設業界は、3Kと言われて悪い印象がある。

逆に言うと建設業界は3Kだから人材が定着しないというイメージをもたれがちだ。

しかし、本当にそうなのであろうか。

他の業界と比べるとどうなのだろうか。

建設業界の離職率問題について、できる限りデータを基に客観的に分析してみよう。

離職率の傾向

全産業の話だが、1990年代、2000年代には離職率は学歴毎に「7・5・3」と言われていた。

新卒社員の3年以内の離職率が中卒で7割、高卒で5割、大卒で3割程度だということだ。

今は改善されていて、例えば厚生労働省の2020年度のデータによると、新卒社員3年離職率は中卒55%、高卒37%、大卒31%となっている。

早期離職はその後の再就職に悪い影響がり、収入が下がったり非正規雇用になったりという傾向がみられるので企業にとっても、就労者にとっても改善するべき問題である。

学歴別の早期離職理由

学歴別の早期離職理由をみてみると、どの学歴でも「仕事が自分に合わなかった」が一番多い。

だが、「仕事が自分に合わない」の原因がそれぞれ違う。

例えば中卒は、就職活動をする人がほとんどいなく、企業や仕事に関する情報が十分に得ることができないまま就職する事が多い。

その為、選択肢がほとんどなく、自分に合う仕事につくことが難しい。

高卒では就職する人数は増えるものの、様々な企業を受けるというよりは一つの企業に絞った、いわゆる専願で受ける傾向があるので、中卒と同じく選択肢が少ない状況がある。

大卒の場合は、情報や企業を選ぶ自由度はあるものの、いざ就職してみると、人間関係や労働条件などが自分の希望と差があるといったことが特徴としてあるようだ。

業界別離職率

では、建設業界の離職率をみてみよう。

実は他の業界に比べて建設業界の離職率は必ずしも高くない。

ある年の離職率を抜粋すると、1位宿泊、飲食サービス業 26.9%に対し11位建設業 9.5%となっている。

ただし、これは各業界全体の離職率であり、3年離職率に限定してみると、高卒では47%、これは全産業平均40%よりも7%も高い。

ゼネコンの離職率

建設業界のなかでも、ゼネコンに絞るとどうなるだろうか。

ある年のゼネコンの3年以内離職率は14.4%となり、さらにその割合は企業規模が大きくなるほど下がる。

例えばスーパーゼネコンの3年以内離職率が5%未満なのは鹿島、清水建設、竹中工務店、前田建設の4社。

中でも竹中工務店はゼネコン売り上げ上位30社の中で最も低い2.8%となっている。

ゼネコン現場監督は業務過多、長時間労働等により、就労環境が厳しいことで有名だが、驚くほど離職率が高いというわけではないようだ。

それでも14%は高いが・・・。

職人さんの離職率

建設業界の就労者数の職種毎の割合は、ゼネコンなどの現場管理者は6%程度に対し、職人さんは66%、そう考えると実際に建設業界の離職率を高めているのは現場監督というより、職人さんということになる。

なかでも就職して3年以内の職人さんが離職率を上げている年齢層ということになろう。

建設業界の離職率を抑えるには

以上の内容をまとめると、そもそも建設業界の離職率は、他の業界に比べて決して高いといいう訳ではないが、その上でさらに建設業界の離職率を下げるには、職人さんの3年離職率を下げることが大切だ。

その為には「仕事が自分に合わない」ということにならないようにすることが大切なのだが、それと同時に、せっかく建設業界で働きはじめた人達に対し、親身になって丁寧に教えたり、プライベートを充実させるために休暇も十分にとれる仕組みを確立しなければならないだろう。

その結果として、やりがいを感じ、収入面でも納得し、人間関係も良好で、待遇にも納得するという、健全な人間社会として当たり前のことを当たり前にする状況を作らねばならないのかもしれない。

そんな夢のような職場をつくるのは無理と思われるかもしれないが、それができなければ離職率を抑えることは決してできない。


この記事はこの人が書いています。

施工管理技士アルノ

1級建築施工管理技士

1級電気工事施工管理技士

1級管工事施工管理技士

1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。

現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、

2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。

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