アルノ
2021年6月19日5 分
2021.06.19
建設業界における設備工事、電気工事の見積書は建築工事とも違う独特の表現の仕方をする。
私は、積算担当ではないので、新築工事の見積書を作成した事はないが、工事管理をするにあたり、新築工事における施主との契約見積書を確認したり、サブコンとの契約見積書を確認したりする。
工事中に発生する追加増減工事については見積書を実際に作成したり、サブコンからもらう追加増減見積書を査定したりする事もある。
施主に対する見積書作成もサブコンとの見積書の査定も工事の適正金額を知った上で行う事なので、今回は適正金額を知るための内容について解説する。
その中で、私が疑問に思う事なども少なからずある事から、見積書の構成も説明しながらつまびらかにしていきたい。
設備電気工事の見積書にはA材、B材という区分けがある。
A材は、空調機器、衛生器具、キュービクルなどの機器関係をいう。
B材は、ダクト、配管、配線などのA材以外の材料のことをいう。
厳密にいうとC材という区分けもあり、ビニールテープ、ビス、ペンなど雑材消耗品と言われるものをいう。
それぞれ見積の方法、査定の方法が異なるのでこの区分けは大切である。
A材はサブコンが機器メーカーから購入する。
空調機メーカー、衛生器具メーカー、盤メーカーといった具合だ。
ゼネコンはサブコンがメーカーから取り寄せた機器メーカーの見積書をもらい金額と内容を確認する。
機器メーカーの見積書はメーカー見積と呼び、見積金額に対してネット金額がある。
ネット金額はメーカーによってメーカー見積の0.9掛け~0.2掛け等、幅広い掛け率があるのでメーカー見積の金額を鵜呑みにすると大変な事になる。
例えば100万円のメーカー見積に対してネットが0.9掛けなら90万円に値段を下げる事ができるという事だ。
適正金額を把握する為に、それぞれのメーカーの掛け率をいくらで見込むかはゼネコンの取引実績データによるところが大きい為、会社の積算担当や購買担当に確認する事になる。
たまに、よく分かっていないサブコンがメーカー見積書そのままの金額で出してくる場合がある。
この場合、機器メーカーにぼられているか、サブコンがとぼけているかのどちらかで、懇切丁寧に見積書の構成、内容等を説明しなければならず金額交渉に苦労する。
掛け率などなくして、はじめからネット金額の見積書を作成してくれればこのような苦労はないと思うのだが、慣習なのだろうか。
それにしても掛け率0.2の見積書になんの意味があるのだろうか。
はなはだ疑問である。
B材はサブコンが代理店から購入する。
その際、適正金額を知るには「建設物価」や「積算資料」等のいわゆる物価本で材料の単価を確認し、査定したり見積書を作成したりする。
尚、追加増減工事の場合は新築工事の契約見積書、つまり本工事の材料単価に合わせなくてはならないので、注意が必要だ。
電工費や配管工費、機器取付費、試験調整費等の労務費もA材B材に分けて作成する。
機器取付費、試験調整費等はA材にまつわる労務費なので、メーカー見積書に掛け率を掛けて適正金額を判断する。
電工費や配管工費はB材に対する労務費なので積算実務マニュアルなどの資料を使って適正金額を把握する。
しかしながら見積書には「電工費一式〇円」というように一式で記載されるので何人が工事に必要なのかは一見わからない。
分からないがゆえに作成する方も高くなりがちだ。
機器や材料の様に「配管工事費 〇人×△日 □円/1日 〇△□円」と内訳を書いてくれれば明確なのだが、そうは記載しない習慣のようである。
経費は各社基準がありなかなか難しいのだが、工事金額、工期等により掛け率が変わってくる。
自社の積算、購買担当に確認するとよいだろう。
経費の内容には以下のような項目がある。
法定福利費・・・職員の法定福利費
現場雑費・・・下請け会社の経費等
共通仮設・・・工事全体の仮設工事
現場管理費・・・現場における経費
一般管理費・・・会社の経費
はっきりいってややこしいし、掛け率の根拠は不明である。
現場で使うバンセンは共通仮設に入るのだろうか。
工事中の夜食用に買うカップラーメンは現場管理費に入るのだろうか。
本社の会議で使用するペットボトルのお茶代は一般管理費に入るのだろうか。
ちなみに役員報酬は一般管理費に入るらしい。
以上説明した見積書は一般的な設備工事、電気工事の見積書の形式だが、別の表現方法も見積書もある。
建築工事は特にこの形が多いのだが、機器や材料費に労務費を見込んでしまう方法だ。
例えば、「空調機 材工共 1台 〇〇円」というような記載になる。
この「材工共」と表現される見積書は複合単価見積書を言われ官庁工事などによくみられる形式である。
ちなみに私が、自宅を王手ハウスメーカーで建てた時は苦労した。
建設業界の見積書の常識が一切通用しないのだ。
例えば、配管5mに対して労務費20万円!
一般的に考えれば5mの配管をするのに2人で半日あれば施工できる。
1人工2万円として2人で半日で2万円。
その日はその仕事しかないという理由があったとしても2人で4万円だろう。
それが20万円である。
「なぜ20万円もかかるのか?もっと安くできるはずだろう」と聞いても「社内の積算基準なので下がりません。」としか説明しない。
まったくうらやましい商売である。
それでいて施工管理はいい加減となるならまったく勘弁してほしい。
ゼネコンの常識が通用しない世界だ。
逆にいうとゼネコンの積算がいかに忠実に適正金額を基に算出しているかがわかる。
決して利益優先ではない。
そのような事をしたら他者に発注されてしまう。。
ハウスメーカーの悪口を言うつもりではないのだが、自宅を建てた時には驚いた。
以上、私が感じる建設業界の設備工事、電気工事の見積書についての所感だ。
こうしてみると、まだまだ透明化できる要素がある。
建設業界の見積書もイノベーションが起こってほしい。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。